初代校長の新渡戸稲造氏は、学俗接近(学問と社会をつなぐ)という言葉を残しています。教科書や教科、さらには教室を超えて、学びをリアルな社会と接続することで、学校で学んだ知識を「知る」ことから、生きていく上で「使える」知識へと生徒たちが変換していくために、新渡戸文化高等学校では大切にしている考え方です。

そこで今週は、オンラインを活用し、全国を旅しながら、学びと社会を接続する教育デザインに挑戦しています。コロナ禍でもあるので、生徒の移動は避け、最小限の教員により、現地からライブ中継する授業の挑戦です。

今回は三重県に来ています。先週のクロスカリキュラム で学んだ一次産業の衰退・高齢化・過疎化・解決に向けての6次産業化の現場を取材し、リアルタイムで生徒たちに届けることで、現実に向き合い、学びの社会を接続して、自分たちに何ができるかを考えてもらうことが目的です。

11/10(火)の午前中は、この教育活動を支援してくれている三重県庁(農林水産事務所など)のみなさんにご挨拶をし、職員研修の講師を、本校の統括校長補佐・山藤旅聞が務めさせせていただきました。

午後は、南伊勢市で展開されている牡蠣養殖の現場を取材しました。牡蠣の養殖で大切なのはこれからの季節の「寒さ」とのこと。その理由は、牡蠣の餌となる植物プランクトンにとって、落葉樹の葉が落ち、分解されることで、その成長に必要なリンやカリウム等が海に供給されることが重要だからと教わりました。

ここ数年、冬の寒さの時期が遅れていて、結果、落葉樹の落葉のタイミングがずれていることが心配とのこと。この知識は生物基礎で学習している生態系分野の学びが、リアルに関係する学びでした。

中継する教員も、初めて知ることばかりで、まさに社会で活用できる知識になった瞬間でした。また、写真にある牡蠣の養殖をしているイカダの素材は、三重県の間伐材を活用していたり、牡蠣を付着させるための足場には、廃棄されているホタテの貝殻を再利用していました。

理由を漁師さんに伺うと、ホタテの貝殻を使用すれば、養殖後は砕いて畑にまけるのでゴミが出ない。ゴミが海を汚すので、そんなことはしないと。持続可能な養殖産業に向けて、現場でしか分からない様々な工夫や知恵を学びました。