こんにちは、NITOBE FUTURE PARTNER(NFP)*1の神薗です。

最近の気になるニュースや出来事に関して、SDGsの観点から新渡戸文化学園の先生にインタビューする企画です。小学生や中学生の皆さんにも楽しんでもらえるようなお話をしてもらいます。

今回のテーマは、まさに!なテーマで「SDGsラボ」の活動についてお伺いします。お話を伺うのは中高で国語を教えている高橋伸明先生です!

神薗:高橋先生、こんにちは。先生は今、学校でどんなお仕事をされていますか?

高橋:現在は中1のメンター(学級担当)、授業では中1と高3特進クラスのを担当しています。クロスカリキュラム(教科横断型学習)のラボに関しては、「SDGs×動画」制作プロジェクトの担当をしています。学内では、プロジェクトデザイナーとして、学校行事である体育祭の企画運営やスタディツアーへの参加、中学校のクロスカリキュラムの全体やスタディフェスタのデザインなども担当しています。

神薗:様々な活動に取り組んでいらっしゃいますね。高橋先生は以前は都立高校にいらっしゃったと伺いました。前任校ではどんな取り組みをされていらっしゃったんですか。

高橋:都立高への赴任前は、大学院(修士)で、生徒指導や生徒との信頼関係構築・AL(アクティブ・ラーニング)等を研究していました。1校目は、約3割の生徒が外国にルーツがあるなど、多様な環境で育った生徒たちのいる学校でした。そこの学校で感じたのが、社会と接続する学びの重要性です。生徒たちの中に課題意識が生まれたり、こんな大人になりたいというようなロールモデルの発見など、生徒たちの変容がありました。学校という枠にとどまらず、開かれた教育の中で生徒たちは育っていくことを確信しました。1校目で立ち上げたのが「高校生記者プロジェクト」という取り組みです。実際に生徒が記者として学校を飛び出して大学や企業に行きインタビューをするという活動です。取材先の決定から、アポイントメント、インタビュー、まとめ、発表に至るまでの過程を全て生徒が行う形式をとり、徹底して「生徒主体」にこだわりました。とは言っても、高校生だけでは困難も生まれてくるので、大学生と一緒に協働で行いました。民間企業等にアプローチする活動なので、就職していない大学生にとっても、メリットになると考えました。
その活動を評価いただき、2019年東京新聞教育賞、2020年読売教育賞の最優秀賞を受賞しました。
https://nitobebunka.ac.jp/media/media-1822/

2校目は、東京都の進学指導特別推進校で、教科や受験指導も熱心な学校でした。勤務校に限らず、進学校では高校3年間のゴールを大学進学をメインにして進むので、大学後の未来や職業を考えるという時間が少ないことがウィークポイントだと感じました。教育実習生と話をしてわかったのは、他の学生はいざ就職活動となったときに「自分は社会で何を為したいんだろう?」とそこで初めて考える人が少なくないということです。もっと、「総合」やキャリア教育で何かできることがあるだろうと感じたんですね。「総合」などの研究をもっと深め、将来は教員を志す学生の指導にあたりたいと思い、大学院の博士課程を受験しました。

神薗:まさに一念発起ですね!その後に新渡戸文化学園とどのような感じで出会ったのでしょう?

高橋:都立教員で外部向けの研修でご一緒していたこともあり、山本先生や山藤先生とつながりがあったんです。新渡戸文化学園の話を聞いていて、教科指導だけでなく、多様な場面で生徒の力を伸ばすチャンスがある学園だと思っていました。大学院への進学も考える中で、机上の研究だけでなく、研究を実践できる最先端の教育の場に身を置いたほうがいいと思いました。ご縁があり、今は大学院生と新渡戸文化学園の教員という二足のわらじを履いてやっています。

神薗:研究と実践を行き来しながら、新しい教育のカタチを模索する、素晴らしい取り組みだと感じます。いよいよ本題に入っていきたいのですが、先日の新渡戸祭でも発表されていた「SDGs×動画」素晴らしかったのですが、このラボはどのような流れで出来たのでしょうか。

▼「SDGs×動画」▼

(中学校) 高橋ラボ「SDGs×動画」制作プロジェクト

高橋:クロスカリキュラム(教科横断的型学習)は、まず「好き」を伸ばそうというところからスタートしています。6月の終わりくらいまで、自分の好きをテーマにして探究を進めていきました。その後、ラボ活動が始まったのは7月から。ラボを始める前に、どんなことに興味があるか?どんなことをやりたいかなどのアンケートを取りました。

「SDGsに興味がある」「動画制作をやってみたい」などの生徒たちの声が集まりました。そこで、若い世代の身近なツールである動画で「SDGsをより多くの人に知ってもらう」目的ものと、「SDGs×動画」制作プロジェクトというラボを開設しました。そこに、中学1年生を中心とした10名程のメンバーが集まってくれ、スタートしました。

神薗:ラボのテーマ設定は、生徒たちの興味関心に寄り添って設定されているところが新渡戸文化学園らしいなあと感じています。具体的な活動に関してもお教えください。

高橋:生徒が様々なテーマについて検討し、知りたい場所や人などにアポイントを取って、取材に行きました。プラスチックごみの問題などを調べていたら、地球温暖化にたどり着いて、影響を結構受けているのは海洋生物だよねということになって、保護している活動を探していく中で、身近に生物を見ることのできる水族館でもSDGsにつながるような取り組みをやっているということで水族館へ見学に行ったりしました。
また、調べていくと自分たちだけで何かアクション起こすのって難しいよねという話になり、じゃあ自分たちの学校のある中野区はどうなんだろう?ということで、環境課に話を聞きに行ったこともありました。それがきっかけになって、11月13日に実施された「なかのエコフェア2021」に中野区からオファーをいただき、唯一の学校団体として出展しました。

https://www.visit.city-tokyo-nakano.jp/nakanoevent/235534/

中学3年生では、スタディツアーで三重県へ行った生徒もいました。少子高齢化が進んでいる過疎地域はどんなところなのか、林業や漁業を見ることで働くことの大変さなどを経験してきたり、他にも夏休みに行けるメンバーでビーチクリーンに行ったりもしました。

神薗:様々なテーマに関して、具体的にインタビューをするなど活動をしてこられたんですね。動画の作成はどうやって作られたんでしょうか。

高橋:NITOBE FUTURE PARTNERの坪谷さん(プロのテレビカメラマン)にラボに来てもらって、教えていただきました。テレビの裏側や、伝えることと伝わることの違いなども教えてもらって、生徒たちが工夫しながら自らの手で作成しました。

神薗:新渡戸文化学園のNITOBE FUTURE PARTNERは、本当に多彩な方がたくさんいるので、まさに大人たちの力を借りて、生徒たちの主体的学びが広がっているなと実感します。ちなみに、このラボでは「SDGsとは何ぞや?」ということを説明することはあるんでしょうか?

高橋:実は、SDGsを取り出して、説明したことはないんですよね。私たちがやりたいことはSDGs教育ではありません。生徒たちが主体的に考えたり、感じたりしている社会への課題意識やモヤモヤを活動していった結果が、SDGsというフィルターを通すと、このことだったんだね。というような流れで本人たちがたどり着くといったようなプロセスでやっていて、あくまでSDGsも社会を見るための窓の一つでしかないと思っています。

前期のラボは新渡戸祭の発表で集大成となりました。次は新たにテーマを作って、ラボの募集・決定をするタイミングです。私のラボは「AFF(Action For Future)」にしました。自分たちの未来へ向けて、一歩を踏み出そう、何か行動を起こそう!そういった思いを込め、テーマを設定しました。自分たちの未来を輝かせるために、活動をやっていくことが重要だと思っていますし、社会の窓としてSDGsが活かせれば、いいアクションを起こしていけると確信しています。

神薗:ラボも課題解決のために行動を起こすという、次のフェーズに突入ですね!ラボ以外でもチャレンジされている取り組みありますでしょうか。

高橋:現在、NIE(Newspaper in Education)教育にも力を入れています。毎週月曜に、新聞の最新ニュースを活用し、社会の課題を読み解いていきます。授業の中でも、レポートなどを書いてもらっていて、その中で課題を見つけ、仮説を立てて、アンケートなどで客観的なデータを取って、考察していくような取り組みをしています。新聞は最新の社会課題を扱っていますから、SDGsとも相性がいいですよね。

神薗:自分たちの持つ課題意識から、社会へつながり、実践を作っていく。とてもワクワクする学びの場ですね。最後に、新渡戸文化学園にチャレンジしたい!と思っている小学生・中学生へメッセージをお願いします。

高橋:新渡戸文化学園は、色んな意味で開かれた学校です。もちろん、社会にも開かれていて、NITOBE FUTURE PARTNERもそうですし、民間の様々な企業や地域とも取り組みをしています。生徒たち、先生たちもオープンマインドな人が多いです。対話を重視していて、想いの共有や関係性を少しずつ構築していきながら日々の活動が進んでいきます。ぜひ、「開かれた学び」をしたいなと思っている人たちに来てほしいと思っています!

神薗:本日はお忙しい中、ありがとうございました!

 

*注1「NITOBE FUTURE PARTNER」とは?

https://nitobebunka.ac.jp/comprehensive/post-1786/
様々な分野の第一線で活躍する社会人が、副業人材として学校の教育活動に参画している。

*注2「SDGs」とは?

https://nitobebunka.ac.jp/about/sdgs/
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。