高校探究進学コースでは11/9(日)-11/15(土)の期間の中で、全国19箇所でスタディツアーを実施しました。各エリアの内容や感想を生徒にまとめてもらしましたのでご覧ください。今回は東京都利島村をお伝えします。 


 青く広がる雄大な海と20万本を超える椿の木に恵まれた東京都利島村。人口は300人ほどで、伊豆諸島の中でも特に小さな島です。私たちは11月9日(日)から12日(水)までお邪魔させていただきました。そこには、強く結ばれた島民と、利島を何百年も残そうと奔走する村役場の方の姿がありました。


 さて、そんな利島村は、大型客船で竹芝桟橋からおよそ8時間。高速船もありますが、冬季は荒れやすい海面が災いしほとんど就航しません。私たちが利島に降り立ったのは11月9日の朝。普段経験しない船での睡眠にメンバーの反応はさまざま。私は腰が痛かったです。あいにくの悪天候に見舞われてしまいましたが、なんとか接岸することができました。村の方にお聞きした情報では、利島は入り江がなく、平時でも波が高いため、船の接岸率が他の島よりも悪いそうです。ここで、私たちは早速利島の課題と現状を知ることになりました。


・1日目
 紆余曲折を経て無事に到着した私たちですが、9日は予定がなくどう過ごすか話していた最中、突然近隣の方に焼き芋にお招きいただきました。全員で思いもよらぬ出来事に驚きながらも、喜んで参加させていただくことにしました。徒歩で10分ほど歩くと、椿畑に10人ほどの人影と煙が。複数の家庭が一緒に開催している様子でした。早速、火おこしから挑戦するものの、雨で湿った木材に火をつけるのは至難の業。結局、自分たちで火は起こせず、着火をお願いすることになりました。しかし、火を待つ間にたくさんお話をさせていただき、新しい気づきに恵まれた時間にすることができました。特に、島民がヘリコプターをタクシー感覚で使っていることには強く驚かされました。

そのようなことがありながらも、概ねスムーズに進んだ初日。同じ東京都にいながらも、一種のカルチャーショックのようなものに振り回された1日でした。


・2日目 
 さて2日目(出港から3日目)。いよいよ本格的な活動がスタートしました。朝から高2生は全員分の朝食作り、高1生は食器洗いに追われるなど、各々がドタバタしながら始まった朝ですが、活動を開始してすぐに早速驚きに包まれることになります。この日は、利島村立利島小中学校に伺い、離島での教育の現状を拝見しました。まず目に入ったのは、数が少なく、どこのクラスも片手で数えられる人数しかいない教室。1人も在籍していない学年があるため、校内には空き教室がありましたが、ついこの間まで誰かがいたような雰囲気に感慨深くなりました。しかし、そんな私たちに、あるクラスの子どもたちが興味を持ってくれ、さまざまな質問を投げかけてくれるなど温かく接してくださいました。島内には高校が存在しないため、小中学校を卒業したら島を出てしまうという事情があり、高校生が1人もいないそうです。同じ東京都の学校で、都民同士が会話しているのにも関わらず、お互いに知らないことが多い事実に驚かされました。実際に目にし、肌で感じないとわからないことが多い学校訪問になりました。


また、その日の夕食は島内のご家庭で頂きました。お忙しい中、とてもおいしい食事をご用意いただいたみなさまに感謝が絶えません。今回はメンバー6人が3家庭に分散してお邪魔するという形で、お話を伺ったり、逆に本土での生活について質問をいただいたりと各々が有意義な時間を過ごすことができました。特に異なる目線からのお話を聞くことができ、メンバー自身が利島村について考える良いきっかけにすることができました。

その後は各自解散で宿舎に戻りましたが、余韻に浸る者もいれば、疲労でぐったりする者もいて各自がプログラムを満喫できたように見えました。


・3日目
 気づいたらもう折り返し地点。ということで3日目が幕を開けました。この日は、農協の方にお話を聞く機会がありました。利島の基幹産業として、島を支えている椿産業について取材しました。利島村は日本でも非常に珍しい椿の名産地で、その椿油は日本をはじめ、世界の有名化粧品メーカーにも供給されています。また、村内の製油所や、椿畑、椿の苗を育成する農協の施設などを見学させていただき、普段ではまず知ることのない椿産業の現状や課題を知ることができました。特に、オーガニック意識が強い海外の基準に適合した椿の実の生産の苦労などの裏話も聞くことができ、非常に貴重な時間になりました。ちなみに、利島村農業協同組合では椿の実を1㎏拾うと、椿油と交換できるそうです。あくまで公道など、公道上に落ちているもののみが対象ですが、高校生7人が3日間かけてようやく1㎏回収することができました。利島村にお出かけの際は、挑戦してみてはいかがでしょうか。



椿産業について理解した私たちが次に向かったのは『利島村エコセンター』。ここでは、村役場の方が、可燃ごみ以外のごみを徹底的に分別していました。例えば、ヨーグルトのカップとふた。分別しない自治体が多い中、利島ではそこまで細かく分類されていました。製品に記載されている分別表示を最大限生かした、エコな街づくりがそこにありました。私たちも分別の体験をさせていただきましたが、普段さほど気にしないことにまで気を使う必要があり、とても効率の良いものではありませんでした。しかし、なぜここまで厳しく分別する必要があるのでしょうか。それは老朽化した焼却炉をできるだけ長く使用するためだそうです。村内には小さな焼却場がひとつ存在しますが、著しい老朽化により建て替えが検討されています。ところが、建て替えるにも高額な費用や、島外から業者を呼ぶための施設の不足など、さまざまな問題を抱えています。そのような問題を少しでも軽減するための措置として行われているそうです。きれいな街づくりの裏にある事情を知った私たちは、それを驚きをもって受け止めました。

・4日目
 そして、いよいよ迎えた最終日。この日、村役場で3日間の学びを発表する予定だった私たちは、本番ギリギリまで、確認や練習に時間を注いでいました。慣れない場所での発表に緊張しているメンバーも見受けられましたが、各々が利島村で気になった内容や、探究をして得た成果などを発表していきました。私はスタディツアーを通じて、『利島村の政策と今後の離島政治のあり方』について探究し、その結果についてお話させていただきました。メンバーからは、『利島村の生態系について』や『椿収穫のより効率的な方法の検討』といったテーマで発表させていただき、職員の方からご意見をいただきました。



その後は、2時間程度を自由時間にあて、悔いのない終わり方ができるよう過ごしました。写真を趣味とするメンバーは、わざわざカメラを持ち込み、写真撮影に勤しんでいました。そんな時間もあっという間に過ぎ去り、全員で港に集まり、役場の方と最後の談笑を楽しみました。わざわざ出航にあわせてお見送りに来ていただき、船が出航した後も手を振り続けてくださいました。そのような光景を目にして、小中学校を卒業して島を出る子供たちの気持ちを少しながら理解できた気がします。帰りの船でも、メンバーはそろって熟睡。準備段階から気を張ってきただけに、肩の荷がおりたような様子でした。



実は、利島村は今回から選ばれた新エリア。2年生にとっては最後の定期スタディーツアーとなりましたが、全員悔いなく終わることができました。あとは、残る1年生たちが先導して、さらに利島スタディーツアーを磨き上げてくれることに期待するばかりです。