こんにちは、NITOBE FUTURE PARTNER(NFP)*1の神薗です。

最近の気になるニュースや出来事に関して、新渡戸文化学園の先生にインタビューする企画です。小学生や中学生の皆さんにも楽しんでもらえるようなお話をしてもらいます。

今回のテーマは、新渡戸文化学園内にあるクリエイティブラーニングスポットVIVISTOP*2と授業がコラボした活動についてお伺いします。お話を伺うのは中学校で美術を教えている川島恵先生です!

神薗:こんにちは。先生は今、学校でどんなお仕事をされていますか?

川島:現在は中学校の美術を教えています。中学校全体の主任をしながら、中1のメンターとして活動しています。

神薗:以前、他県の公立中学校にいらっしゃったと伺いました。どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

川島:教育大の美術科を卒業しました。教育大なので、教員免許を取るのが必須でした。幅広く色々なことを学べる環境で、油絵・陶芸・彫刻等を経験しました。学内には様々な教科の先生がいるので、好きだった数学の授業にもぐりこんだり、心理学のゼミに参加したりもしました。卒業後は、私立学校の非常勤講師として働きながら、仏像修復の助手をしていました。

神薗:仏像修復の助手ですか!?それは、中々ないキャリアですよね。

川島:京都の骨董市に通っていました。大学の先輩を通して出会った仏師の方に、古いものが好きならと声をかけられ、仏像修復の現場で8年間仕事をしていました。文化財を修復する仕事は、彫刻や漆、彩色、古文書等、様々なプロフェッショナルが関わる仕事です。お互いがそれぞれの分野のプロとして活躍されている、そういう方たちとの関係性や信頼の作り方を学ばせていただいたことが今の仕事にも活きているなと感じています。その後、これからの自分にできることは何だろう?とたくさん考えて、学校教育にずっと関わってきたことなども踏まえて、一度学校教育にちゃんと関わろうと考えました。

カンボジアへ仏像修復の助手として同行した時の写真

神薗:その後、公立の中学校へ行かれたんでしょうか?
川島:そうです。横浜市の募集に応募して、公立中学校で6年間働き、学年主任なども務めました。

神薗:そこから、なぜ新渡戸文化学園で働くことになったのでしょうか。

川島:教員をやっている中で、生徒から「ここに何色塗ったらいいですか?」と質問されたことに衝撃を受けました。そのような質問が年々増え、「自分の作品なのに、なぜだろう・・・」と感じていました。美術の授業では課題を出すんですけども、それに評価をつけないといけないですよね。高校受験に影響するので、生徒たちは気にします。私もその生徒が、なぜその評定だったのかを説明する責任があるので、分かりやすく説明できるように課題や授業を設計していくようになります。良い評価をもらうために、自分で塗る色さえも決められない(決めない)生徒が増えていく現状でした。教員にとして、やれるだけのことはやりましたが、「子どもたちの可能性を伸ばしきれていない」という想いを持ち、辞表を出しました。そんな時に出会ったのが、横浜創英中学・高等学校の校長である工藤勇一先生の書籍でした。当時は、千代田区立麹町中学校の校長先生をされていて、ご縁あってお会いすることが叶いました。そこでご紹介いただいたのが、山本崇雄先生でした。新渡戸文化学園の構想を聞かされて、今まで聞いたこともないような話だったので、聞いたときはびっくりして「ポカーン!」となってしまいましたが、たくさんの可能性を感じて、勤務をすることに決めました。

神薗:工藤先生が山本崇雄先生を紹介されたとは、まさにご縁ですね! それでは本題に入っていきたいと思うのですが、中学校の美術の授業とVIVISTOPを掛け合わせて授業をされたと聞きました。どんなテーマで実施されたんでしょうか?

川島:「遊びをアップデートする」というテーマで進めていきました。

神薗:ワクワクするテーマです。なぜ「遊び」をテーマにしたんでしょうか。

川島:遊びは、子ども時代に必ずみんな経験し、夢中になっていましたよね。誰もが入りやすいテーマということで、「遊び」を設定しました。中学2年生の28人が協働して、イマジネーションを広げて、その遊びを体験した人たちが喜んだり、楽しんだりしてもらう活動にしたいと思いました。

中2「”遊び”をアップデート!?」#1 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→テーマ設定の様子をまとめた学園ブログ

神薗:この授業は、VIVISTOPのスタッフの方々にもサポートいただいて、授業が進められたと聞いています。

川島:すでに上の学年の生徒たちの授業ではVIVISTOPを利用していた経験があって、教室でやるのとVIVISTOPでやるのとでは、雰囲気が違うと感じていました。そこに、さまざまなバックグラウンドをもつ、ワクワクすることが好きな大人たちを交えたら、面白い化学反応が起きるだろうなと。

神薗:何名くらいの大人がサポートしてくれたんでしょうか?

川島:5人の方に入ってもらいました。何度も話し合いの場を持ちましたが、その中で、遊びをアップデートする武器の1つとして、「VIVIWARE Cell*3」を使うといいんじゃないか?という案をもらって、生徒たちに紹介をしました。その紹介の方法がすごくて。特撮の仮面ライダーのような感じで、剣をふるとビームが出てくるみたいなことを生徒たちの前で再現してくれたんですよ。生徒たちも立ち上がって、「おおおおお!!!!!」となっていました。私だけでは、授業の導入であんなこと絶対できないです。生徒たちも「すごい!使ってみたい!」となっていました。

中2「”遊び”をアップデート!?」#2 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→VIVISTOPの皆さんとの出会い、そしてVIVIWAREを紹介している様子

神薗:まさに、学校の中だけではできない学びや化学反応がVIVISTOPという場所で起きて、好奇心に火がついた感じですよね。

川島:そうです!実際にVIVIWAREを使ってみる授業を行いました。スタッフの皆さんにも入ってもらいながら、試行錯誤の時間があっという間に過ぎました。この段階では、テーマの「遊びをアップデート」にはまだ直結していないのですが、ここでワクワク感じたことや、取り組んだささやかなこと一つ一つが次につながっていくような感覚を持ってもらいました。

中2「”遊び”をアップデート!?」#3 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)

中2「”遊び”をアップデート!?」#4 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→VIVIWAREで試行錯誤している様子

神薗:生徒たちは知らず知らずに、楽しみながらプログラミングを学んでるんですね。ここから、具体的な「遊びをアップデート」の活動に入っていくと思うのですが、チームで活動したんでしょうか?

川島:チームは、多様性を意識してランダムに構成しました。チーム名を決めたり、どんな遊びをどのようにアップデートしていくかを相談したり、VIVIWAREなどのモジュールがどう使えるかを試したりと進めていきました。

神薗:VIVIWARE等のプログラミングを必ず活用するようにしたんでしょうか?

川島:そこは、各班の判断に任せました。あくまで目的は、「遊びをアップデート」し、それに触れた人たちを楽しませることやワクワクさせることなので。方法はデジタルでもアナログでも、一番いいものを自分たちで選んでもらえるようにしました。

中2「”遊び”をアップデート!?」#5 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)

中2「”遊び”をアップデート!?」#6 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→班での活動の様子

神薗:アップデートした遊びを発表する場であった新渡戸祭が、対面形式からオンラインに変更になったことで方針転換がすごく大変だったと思うのですが、そのあたりはどうだったんでしょうか?

川島:生徒たちに正直に言いました。「社会状況で仕方ないこととはいえ、どうしようか・・・。」と。そしたら、生徒たちも相談に乗ってくれて、動画作成して伝わるようなものを作ろうということになりました。困っているよということを正直に伝えたことで、生徒たちに逆にスイッチが入ったんです。

神薗:「ピンチはチャンス!」ですね。それを転換できる生徒さんたち、本当に素敵です。

中2「”遊び”をアップデート!?」#7 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→ピンチがチャンスに変わった授業の様子


川島:大人チームも悩みながら、生徒たちに接していました。VIVISTOPのスタッフは小学生と接する機会が多い状況で、小学生はきっかけを与えるとすぐに反応・行動するところがあるけど、中学生は小学生とは感覚が違うので、対話をしながらどこまでアドバイスをするか、どこまで委ねるかを考えていきました。基本的には、子どもたちが挑戦する姿勢を応援する形で進めていきました。大人も、対等な仲間として意見は言う。専門的な視点に驚きの反応もあるけど、生徒から素直に却下される時もある(笑)。そういった化学反応を経て、各班素敵な動画が完成し、新渡戸祭でオンライン発表に至りました。新渡戸祭が終わった後に、それぞれのチームで考えた遊びをみんなでリアルに試す機会を作りましたが、お互いに新たな発見をしたり、笑顔になったりする瞬間を共有できたことは非常に良かったと思います。この授業を通して、いつもとは違うメンバーで互いに対話が生まれたり、それぞれの得意な面が自然に見られたり、デジタルネイティブの生徒たちが動画制作で圧倒的なスキルを発揮して大人たちが驚くなど、生徒たちも大人たちも学び合い、わくわく発見し合うような時間になりました。私自身も、生徒たちを信じることができれば、一人一人が輝くんだということを改めて実感しました。

中2「”遊び”をアップデート!?」#8 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)

中2「”遊び”をアップデート!?」#9 | VIVISTOP NITOBE (nitobebunka.ac.jp)
→新渡戸祭での発表の様子やその後の授業の様子

神薗:まさに「遊びもアップデート」され、「学びもアップデート」された素晴らしいお話ありがとうございました。最後に、新渡戸文化学園の受験を検討されている小学生や中学生へ向けてメッセージをお願いします。

川島:新渡戸文化学園は自分が変わりたいと思ったら、変わることができる場所です。自分だけでなくて、誰かの笑顔につながることを実践できる場だと思います。変わるためには、向き合いたくないところに向き合う必要があるけども、そこに寄り添う先生たちや仲間がいます。想像しなかった未来の自分に出会える、そんな自分をつかみ取れる環境があります。

神薗:本日はお忙しい中、ありがとうございました!


*注1「NITOBE FUTURE PARTNER」とは?

https://nitobebunka.ac.jp/comprehensive/post-1786/
様々な分野の第一線で活躍する社会人が、副業人材として学校の教育活動に参画している。

*注2「VIVISTOP NITOBE」とは?

https://www.nitobebunka.ac.jp/vivistop/

教室や教科、学年など、これまでの学校の仕組みを越えて、先生も生徒・児童も共につくり、共に学ぶ場。アートやサイエンス、テクノロジーなどのを活用し、多様な価値観を持つ人たちと共創しながら、自分たちなりの想いを実現させる活動をつくっています。

*注3「VIVIWARE Cell」

https://cell.viviware.com/

アイディアを具現化し、思考を拡張させるプロとタイミングツール/おもちゃ・電子機器・デジタルアートなど、自分のアイディアを気軽に試作できる。